堀・石川研究室
石川健治
1+1=2ではない
研究室へようこそ.
私は低温プラズマを使って,コンピュータ等の電子機器をつくることから,成長促進やがん治療などの生体への作用から農業や医療への応用に向けて,低温プラズマの科学について研究しています.雷や炎,オーロラや星など,身の回りに,宇宙に,皆さんとプラズマの関わりは強いのです.プラズマには,電子とイオン,そしてガスが活性化したラジカルを含んでいます.このイオンやラジカルは電子が衝突する物理的な作用で生成することを説明できます.さらに,プラズマを活用して,材料やモノをつくること,他にも生体に及ぼす影響などは,化学や生化学の作用で説明されます.これが分かったとしても,プラズマについて調べていくと,イオンとラジカルの作用は別々ではなく,相乗的に対象と相互作用することから,思いがけない結果が得られ,説明ができなくなります.それでも,この機構がどうなっているのか?少しでも役にも立つよう,科学を進め,研究で解明することに取り組んでいます.
研究を初めれば,最初は退屈で,気もめげることが続くのですが,達成した時,また他人から少なからず称賛の評価を受けた時,仕事をやった気になります.学生には,この感覚を体験し,諦めずにできること,そして研究は面白いことを教えたい.ですので,諦めずにできる学生と一緒に研究できることを願っています.
さて,少しエピソードを紹介します.大変昔の話しで今は違うかもしれませんけれども,新幹線に使われる青い塗装は銅フタロシアニンという有機物の色素を使っていると聞き,この分子は光励起して電子を流すことを知りました.全く関係ないと思っていた分子構造と色と電子移動が同じ問題で解けることに驚きをもちました.今となっては,当然のことかもしれないのですが,高校の物理と化学が一緒に考えられるようになった昔の話しです.今でも,プラズマの研究を通して,同じように物理学も化学も生命化学も境目なく,課題解決を重んじる学際的な考えに至る元になっています.答えは必ずしも専門知識にあらずと思えます.いずれ,プラズマで生体機能を制御するようなことができるかもしれません.
研究生活を送る学生の皆さんには,科学者や技術者になって,自分の仕事をする為にも,博士を目指し,世界を目指し,「人」として成長して欲しいと思います.専門的な知識やスキルを習得するだけでなく,一生を過ごしていく道先案内人を自分の中に見つけることが願いです.
ところで,プラズマの中から,イオンについて一つ,またラジカルについてもう一つと足し合わせても,プラズマの話しにはなりません.それは,物理と化学の知識をそれぞれもってきて,ただ足し合わせても答えには辿りつかないことが多いのと同じです.研究室には1+1=2ではない世界に溢れています.
最後に,皆さんが博士や世界を目指す中で,一人一人が独立した人生を送る無限の可能性を秘めています.プラズマの研究には,未知を探究する課題は多くあり,堀・石川研究室の環境は,自己を研鑽するのに相応しい場であると確信しています.