情報・ライフ・グリーンテクノロジーの革新のための高度機能スマートナノプロセスとナノシステムに関する研究

プラズマ科学

高精度プラズマ気相計測技術 超小型ラジカル絶対密度モニタリング装置の開発 赤外線、可視光、紫外線、真空紫外光および各種レーザーを駆使したプロセスインラインモニタリングシステムの構築

View details »

材料科学

革新的グリーンテクノロジー ハイブリッドナノカーボン材料の創成とそれを用いた革新的な薄膜太陽電池の実現 薄膜Si太陽電池の超高性能化のための、高精度ラジカル制御SiH4/H2プラズマによる高品質微結晶シリコン薄膜低温形成技の確立

View details »

プラズマバイオ

先端プラズマプロセスが実現するバイオ・ライフテクノロジー(プラズマ医療、プラズマアグリカルチャ) 超高密度・高精度大気圧非平衡プラズマを用いた低負荷癌治療技術の確立 腹腔内プラズマ治療のためのカテーテル型プラズマ源の開発

View details »

研究設備

空間分布計測用装置 XPS装置 次世代エッチング装置(I-4100) UHFプラズマCVDシステム 地球環境調和型量子反応制御装置 インラインモニタリング開発装置 電子ビーム励起プラズマ装置 ICP装置 プラズマ診断装置

View details »

太陽電池

SiH4/H2プラズマによる高品質微結晶シリコンの低温形成と機構解明

View details »

超臨界流体

新ナノカーボン:カーボンナノウォールの燃料電池電極への応用 超臨界流体を用いたカーボンナノウォールへの白金微粒子担持 目的 超臨界流体を用いたカーボンナノウォールへの白金微粒子担持とそのメカニズムの解明 背景 現在地球上を走る自動車は約7億 ...

View details »

ナノグラフェン

グリーンエナジーデバイス ナノグラフェン合成中の液中プラズマの分光計測 背景 グラフェンは優れた物性値を示し、構造材料や電子材料、ユニークな特性を活かした新しいデバイス、医療、バイオなど、幅広い応用が考えられ、研究が進められています。

View details »

ナノグラフェン

グリーンエナジーデバイス 液中プラズマ法によるナノグラフェンの制御合成とその燃料電池応用に関する研究 背景 現在地球上を走る自動車は約7億4000万台といわれており、ガソリンや軽油を燃料とする自動車は、地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO ...

View details »

ナノプロセス

原子層制御プラズマナノプロセスシステム 原子スケールでの超微細加工プラズマプロセスの確立 背景 半導体デバイス製造での要求される加工寸法は1 nm以下になることが予想され、プラズマ内の活性種と基板最表面の原子1つまたは1原子層単位での化学反 ...

View details »

窒化ガリウム

次世代ナイトライド系パワーデバイスの実現 次世代GaN系パワーデバイス実現に向けたラジカル励起有機金属化学気相成長法に関する研究 目的 背景 近年、温室効果ガスの排出量増加といった環境問題や、化石燃料の枯渇といったエネルギー問題の解決が求め ...

View details »

窒化ガリウム

次世代ナイトライドエレクトロニクス 次世代窒化物半導体素子製造に向けた低損傷微細加工に関する研究 背景 窒化物半導体は、ワイドバンドギャップ、高耐熱性、高電子移動度などの物性的特徴から、高出力高周波で動作する電子デバイスへの応用が期待されている。

View details »

ナノバイオセンシング

ナノバイオセンシングデバイス 非平衡大気圧リモートプラズマによるナノバイオセンシングデバイスの表面加工プロセス 背景 手のひらのサイズのナノバイオデバイスで、簡単に人の健康状態のチェックや診断ができるシステムを目指した研究開発が現在盛んにな ...

View details »

プラズマ医療

プラズマ培養液による選択的アポトーシス誘導プロセスに関する研究 プラズマのバイオマテリアルに対する作用プロセスの解析 背景 がんは、昭和56年以降現在に至るまで日本人の死因第1位を占めており、その治療法の確立は急務となっている。

View details »

カーボンナノウォール

電子ビーム励起プラズマを用いた単一橋架けCNWの作製 目的 単一橋架けCNWを用いた次世代電子デバイスの作製 背景 次世代の新材料としてカーボンナノチューブ、フラーレンを代表とする、ナノカーボンが注目を浴びています。

View details »

カーボンナノウォール

カーボンナノウォールの初期成長過程の解析および解明 目的 プラズマ中の活性粒子がどのようにカーボンナノウォール成長へ寄与しているかを調査すること 背景 新規二次元炭素ナノ構造体であるカーボンナノウォールは、多層グラフェンシートが基板に垂直に ...

View details »

エッチング(Low-k)

脱温暖化のための新規フルオロカーボンガスを用いた高速low-k膜エッチングプロセス 目的 温室効果の低い新規フルオロカーボンガスを用いた、low- k膜エッチングに最適なエッチングプロセスの構築を行う。

View details »

ビーム(low-k)

原子・ラジカル・イオンビームによる表面反応素過程の解明 ラジカル注入型イオンビームを用いたLow-k膜のエッチング基礎反応過程の解明 目的 Low-k膜のエッチングプロセスを定量的に理解し、実用化に向けて最適なエッチング条件を見出す。

View details »

プラズマ診断

大面積エッチング装置を用いたプラズマ診断 レーザートムソン散乱法を用いた電子の挙動に関する研究 目的 レーザートムソン散乱計測法を用いて、大規模エッチング装置の電子の振る舞いを解明する。

View details »

深掘りエッチング

SF6/O2ガスを用いた高速SiエッチングプロセスにおけるFラジカル、Oラジカルの挙動の解明 目的 SF6/O2ガスを用いた高速SiエッチングプロセスにおけるFラジカル、Oラジカルの挙動の解明 背景 三次元LSI(large scale i ...

View details »

ラジカルソース

高密度ラジカルソース 背景 窒素プラズマにおける窒化プロセスが窒化膜の生成、エッチングダメージの修復及び窒素ドーピングに対して重要な役割に立つため注目されている。特にプロセ ス中原子状窒素ラジカルが重要と見られている。

View details »

大気圧プラズマ

超高密度非平衡大気圧リモートプラズマ源の開発・気相診断・ガラス表面洗浄プロセス 目的 超高密度非平衡大気圧リモートプラズマをガラス表面洗浄プロセスに応用し、メカニズムの解明を行うこと。

View details »

大気圧プラズマ製膜

大気圧非平衡プラズマによるアモルファスカーボン膜の作成 大気圧非平衡プラズマを用いたアモルファスカーボン膜作成に関する研究 目的 新しい大気圧非平衡プラズマ法により大気圧下での薄膜形成を行い、そのメカニズムをプラズマ計測法により解明する。

View details »

自律型ナノエッチング

自律型ナノエッチング装置の開発 自律型フィードバック制御システム 目的 現在の大部分の工程でプラズマが使われている半導体デバイスプロセスでは、ナノメートル寸法の精度での超微細加工 が必要とされている。

View details »

アッシング(low-k)

低誘電率層間絶縁膜のダメージフリーアッシングプロセスに関する研究 目的 これまで大規模集積回路(LSI)は、スケーリング則に基づき、高集積化のため配線の微細化、多層化が進められて きたが、近年、LSIの高集積化に伴う様々な問題が指摘されるよ ...

View details »

研究設備

研究紹介

低温プラズマ科学を活用した革新的テクノロジーについて研究しています.

電気の知識を応用してガスに放電を起こすと,プラズマという状態が生成されます.ガスの温度が低いまま,プラズマ中の電子が加熱されている比平衡な状態を低温プラズマと呼んでいて,様々な産業分野に応用されています.火力ではガスの温度が高く,プラスチックなどの融点が低い材料には使えません.低温プラズマを使うと,ガスの温度は低く,プラズマ中の電子・イオン・ラジカルと発光する光の作用で,火力などにはない形でも非平衡な状態の下で化学反応を起こすことができます.スマートフォンなどの電子機器には欠かせない半導体を製造する際,このプラズマを活用した製膜技術やエッチング技術などのプラズマプロセッシングが使われています.当研究室では,以下をはじめとする研究の数々を行っています.

  • プラズマエッチング
  • プラズマナノ材料創成
  • プラズマバイオ応用

プラズマエッチング

半導体の配線は,原子スケールの幅で作られています.原子スケールとは,10の-10乗メートルのことです.このスケールがどれほど小さいかといえば,1mを地球に例えると,地球の直径は13,000kmですから,例えば1.3cmほどのブドウの房の寸法を地球上で制御していることになります.

電気絶縁をもつ絶縁膜をプラズマエッチングで配線用の溝と孔を形成します.このプラズマエッチングでは,プラズマで生成されるイオンとラジカルの加工面での表面反応が重要になります.メモリカードで使われる3D-NANDフラッシュメモリがあります.このメモリの製造ではプラズマエッチングの技術革新が欠かせない状況です.

そこで,次世代のプラズマエッチング技術を創出するため,以下をはじめとするテーマに取り組んでいます.

  • 自律型ナノプラズマ装置
  • 原子層エッチングプロセス
  • パルスプラズマ制御
  • 装置&表面反応シミュレーション
  • エッチング向け新材料ガス

さて,プラズマエッチング技術の開発は,どのように進んでいるでしょうか?

プラズマ装置の中やナノスケールの表面での化学反応は,一見して理解できないとても複雑なものです.そのためか,装置のパラメータにあるガスの流量や圧力,電力などを試行錯誤で変えて,エッチングの仕上がりを得て最適条件を見つけ出すという開発が為されています.この方法は,膨大な資源とエネルギー,さらに人材の浪費を伴っています.また,新しい装置,新しい材料の出現に,常に一からの開発が余儀なくされます.そのため,プラズマ内でのイオンやラジカルの挙動を観測し,それらのうちエッチング反応に関わる主要な化学種を見いだし,それらの表面反応を原子レベルにおいてモデリングすることで,普遍的な制御ができないか?という目標の達成を目指しています.謂わば,装置のつまみにある制御量を外部パラメータ,プラズマの内部で生じるエッチング反応に関わる変数を内部パラメータと呼び,この内部パラメータの観察から,装置はフィードバックを受けて,さらに制御する「自律型ナノプラズマ装置」の開発に取り組んでいます.

自律型ナノプラズマ装置では,被加工物の温度とプラズマ中のラジカル密度をリアルタイムに計測して,フィードバック制御することに成功しています.この革新的なテクノロジーを使うと,エッチング形状を加工物温度とラジカル密度から自律的に制御することが可能となりました.

次に,Siなどの結晶をエッチングすることを想像してみてください.これまでは,最表面の結晶構造は乱れを生じなからしかエッチングができていません.これを,結晶構造の乱れなどを極限まで抑え込んで,原子層レベルでエッチングすることを目指しています.この課題には,材料毎の選択性や加工形状の制御が挙げらています.すなわち,どんな材料でも,どこからでもエッチングできる「原子層エッチングプロセス」の創出を芽剤しています.

現在,大学機関でエッチングの研究を進めている研究室が減ってきました.次世代の半導体にはプラズマナノプロセスは必要不可欠であります.一方で,プラズマプロセスを進めるには多くの専門知識も必要であり,様々な計測や解析手法を使っていかないと理解できない分野でもあります.プラズマエッチングでみられる現象を原子レベルで解析して,想像力を働かして診断していくことで,何が起きているのか自ら考える場となっています.

プラズマナノ材料

エネルギーを有効に利用する上で燃料電池や二次電池が世の中で欠かせなくなってきています.スマートフォンが携帯で動くのも軽量で高密度な二次電池が開発されてきたからです.このような電池の中の構造には,カーボンの電極が多く使われています.当研究室では,このような電極材料に適したカーボン材料をプラズマ技術を応用して生み出しています.

プラズマを制御して,水素原子と炭化水素ラジカルの量を変えることで,カーボンの同素体であるダイアモンドからグラファイトまで思い通りに作成することができます.板状のグラファイトを表面から垂直に立てたカーボンナノウォールの作成に成功しています.二次元材料を表面垂直に立てることのできるユニークな材料となっています.また,アルコールの液体の中でプラズマを生成すると,マイクロメートルからナノメートルの大きさのフレーク状のグラフェンが合成できることをみつけました.

カーボンから成る自己組織化現象を持って作成された材料は,生体親和性も高く,細胞培養足場にも適していることがわかっています.

さらに,カーボン薄膜を,光透過性や電気伝導性,熱伝導性,表面摩耗性などの物性を制御して,これまでにない特性を達成することがプラズマ製膜では実現しています.

窒化物の高速成長にもプラズマ技術が活用され,高密度窒素ラジカルソースの開発によって達成が実現されてきました.

名古屋大学の高電圧電子顕微鏡施設の反応科学超高圧電子顕微鏡を用いたグラフェンシートの観察も成功しています.

原子・分子を操作したり観察したりできるナノテクノロジーの技術をプラズマプロセスに応用し,新材料の創成を実現することを芽剤しています.

プラズマバイオ応用

一つにはプラズマ医療があります.プラズマをがん治療に使う試みがなされています.プラズマを患部に直接照射する方法,免疫細胞を賦活化させる免疫療法,プラズマで活性化した物質を投与する化学療法などが試みられています.しかしながら,どのようにがんを治療していくのか,その作業機序は未解明のところが多くあります.そのため,細胞内の分子機構を統一的に理解して,プラズマが生体,細胞に及ぼす影響を解き明かすことを目指して,生物学や医学の研究室とも共同して研究を進めています.
 もう一つにはプラズマ農業があります.古く稲妻という言葉にも雷光が稲作を豊作にすると言われており,プラズマが何かしらの食物の栽培に効果があると信じられてきた.実際,イネやイチゴなどでプラズマ処理の効果を試験したところ,収穫した作物の量と質ともに向上することが示されている.
 低温プラズマを活用したがん細胞の選択死滅や細胞再生の分子メカニズム,農水産の成長促進が達成できれば,難病の治療や食糧危機を解決する革新的な技術になり得る可能性を秘めている.

最後に

当研究室では,プラズマがもたらすあらゆる現象に好奇心をもって,現象を計測し,解析し,モデリングを進めている.この過程を通して,人類の生存と繁栄をもたらす問題解決策を産みだし,その知識を生産することをモットーとしている.このような研究を通して,学生は(1)人間力を高め,(2)装置・メカニズムを理解し,(3)科学に根ざした知識に勇気をもって発言し,行動できるように育っている.

低温プラズマは,

産業に,社会に変革をもたらし,人類の根幹をも揺さぶる, 唯一無二の学術分野である. 可能性は計り知れないが,原理は未解明 (堀 勝)

学術的に解明する,低温プラズマ科学研究が,まさに今,求められている.