窒化物半導体は、ワイドバンドギャップ、高耐熱性、高電子移動度などの物性的特徴から、高出力高周波で動作する電子デバイスへの応用が期待されている。これらデバイス作製において、プラズマプロセスは不可欠である[1~2]。一方で、微細加工時発生するプラズマダメージがデバイス特性を劣化させる要因となっており、低損傷/無損傷な微細加工技術が求められている。プラズマエッチング後の窒化ガリウム(GaN)表面では、反応生成物の表面残留、ならびにイオン照射や真空紫外線(VUV)/紫外線(UV)照射を原因とするダメージ生成によって、電気的及び光学的に特性が劣化することが大きな課題となっている。更なるデバイスの高性能化、またパワーデバイスといった次世代デバイス実現には、加工後のダメージを無くさなくては解決しない。
[1]. S. Nakamura, et al., Appl. Phys. Lett. 64 (1994) 1687.
[2]. B. Goldenberg, et al., Appl. Phys. Lett. 62 (1993) 381.
基板を昇温してエッチングすることで、表面反応生成物の揮発による残留抑制、結晶欠陥の原子再配列による欠陥修復、化学反応促進によるイオンや光照射を抑制して微細加工、といった効果からダメージ生成の抑制が実現すると考えられる。そのため、高温プラズマエッチングによるGaNの超精密微細加工技術の実現に取り組んでいる。本研究では、プラズマ-表面の相互作用についてイオン・ラジカル・光といった各要因の個別効果に加え、それらの相乗効果を解明して、低損傷プラズマプロセスの構築を計画する。構築には詳細な損傷解析が要求されることから、深い準位の過渡容量分光(DLTS)により、欠陥のエネルギー準位と捕獲断面積、トラップ濃度の深さ方向プロファイルを実施する。また、XPSによる表面結合状態、並びに原子間力顕微鏡(AFM)による表面形態、PLによる発光特性を分析評価する。そこで、プラズマ生成するイオン・ラジカル・光が、どのように加工に寄与し、損傷をもたらすのかを定量的に捉まえ、総合的に分析することにより、その結果を反映させた低損傷プラズマプロセスの構築を目指す。
図1.実験装置図