温室効果の低い新規フルオロカーボンガスを用いた、low- k膜エッチングに最適なエッチングプロセスの構築を行う。
現在、地球温暖化が問題視されており、二酸化炭素を代表とした温暖化に寄与する温室効果ガスが削減対象として指定されています。しかし、半導体層間 絶縁膜エッチングプロセスでは二酸化炭素の何千から何万倍も温室効果があるCF4やC4F8といったフルオロカーボンガスが現在でも非常に多く使用されて います。
また、近年、半導体デバイスの高集積化とチップサイズの縮小に伴い、半導体素子及び配線の極微細加工が必要となっています。しかし、次世代の設計寸 法においては、従来の配線金属(Al)や絶縁膜材料(SiO2)を用いていては、信号が配線を伝わる時間(配線遅延時間)がゲートの応答時間(ゲート遅延 時間)を上回ってしまうため、Cu配線技術や、低誘電率(Low-k )絶縁膜材料の導入が進められています。
そこで本研究では、温室効果の低いガスを新たに合成し、low-k膜に最適なエッチングプロセスの構築を試みています。
図1に示した、量産型の8inch(200mm)ウェハ対応RF60MHz/2MHz容量結合型プラズマ装置を用いて、ULSI低誘電率層間絶縁膜のナノ加工プラズマプロセスを行います。 上部電極に60MHzの高周波電力を印加することでプラズマを生成し、下部電極に2MHzの高周波バイアスを印加し、プラズマ中で生成されたイオンを効率的に引き込み、エッチングを行います。(RIE;反応性イオンエッチング) 本研究では、現在工業的に用いられているPFC(C4F8,CF4)と新規ガス(PPVE)のエッチングレートや形状といったエッチング特性の比較を行っています。さらにプラズマ内部や、膜表面などを計測し、プロセス時におけるプラズマの状態とプロセス結果とを照らし合わせ、エッチングプロセスの機構解明、及び問題解決を行います。
<p>図1 : エッチング装置
下図にPPVEガスを用いたエッチング後のSEMを示します。この図からわかるように均一なエッチングが実現されていることが分かります。次に、図 2にポーラスSiOCH膜エッチングレートのトレンチ幅依存性を示します。このグラフから従来のC4F8ガスと比較してPPVEガスは約1.5倍程度の エッチングレートが得られています。このほかにCFX(X=1-3)ラジカル密度の測定などを行った結果からもPPVEガスが非常に優れた特性を持っていることが分かっています。
図2 : PPVEガスを用いたエッチング後のSEM像
図3 : ポーラスSiOCHエッチングレートトレンチ幅依存性