近年、大気圧低温プラズマを用いた医療研究が盛んに行われています。名古屋大学ではこれまでに独自に開発した超高密度プラズマ発生装置を用いたがん治療研究、特に、プラズマ活性溶液による脳腫瘍、卵巣がん、胃がんの治療研究において数多くの研究成果を挙げてきました。2012年度には文部科学省のプロジェクトである新学術領域「プラズマ医療科学の創成」(領域代表:堀 勝 教授)が立ち上がり、オールジャパン体制でプラズマ医療科学の研究が活発に進められる中、2013年に世界に先駆けてプラズマ活性培養液による抗腫瘍効果を報告すると、国内のみならず、世界中でプラズマ活性溶液の研究が活発に進められるようになりました。2016年には新種のプラズマ活性溶液であるプラズマ活性乳酸リンゲル液による抗腫瘍効果を報告しました。これらを含むプラズマ照射した溶液を総称してプラズマ活性溶液と呼んでいます。
以上のような背景の元、2019年度より科研費・特別推進研究「プラズマ誘起生体活性物質による超バイオ機能の展開」(研究代表者:堀 勝 教授)が開始しました。本研究により、プラズマによって誘起された生体活性物質の分子構造と物性を突き止め、各物質と生体との相互作用を解明することによって、超バイオ機能発現の本質を明らかにします。また、活性物質による細胞死、増殖、分化などの真核生物に普遍的な現象の分子機構を解明します。その成果を基盤にして、プラズマ医療、農業という未来産業を拓く羅針盤となる、学術基盤『プラズマ生命科学』を切り拓き、地球規模の課題である、難病治療や食糧不足などを解決するイノベーションを産み出します。