SiH4/H2プラズマによる高品質微結晶シリコンの低温形成と機構解明

各種計測手法を用いたラジカルの挙動に関する研究

プラズマCVD法による微結晶シリコン薄膜の形成機構を解明し、フレキシブルデバイス応用に向けた高品質微結晶シリコン薄膜形成を目指す。

背景

微結晶シリコンは、その高い電子移動度、光劣化しない安定した構造から、液晶ディスプレイ用TFT(Thin film transistor)や薄膜太陽電池など 様々なデバイスにおける応用が注目を集めています。特に、微結晶シリコンはプラズマCVD法を用いて成膜することによって、100~200度といっ た低温で大面積均一に成膜できるため、プラスチック基板を用いたフレキシブルデバイスを実現できると期待されています。

プラズマCVD法による微結晶シリコン薄膜の形成には、プラズマ内のラジカルと呼ばれる活性種が重要な役割を果たしていると考えられていますが、 そのメカニズムはまだ十分に解明されていません。高品質な微結晶シリコン薄膜を形成するためには、ラジカル振る舞いを定量的に把握し、形成機 構を解明することが、必要不可欠だと考えられています。そこで、本研究室では、様々な計測手法をもちいてラジカルの挙動を詳細に調査すること により、微結晶シリコン薄膜の形成機構を解明し、高品質な微結晶シリコン薄膜を形成することを目的としています。

アプローチ

・ 微結晶シリコン薄膜の低温形成、膜質評価

・ VUVLAS、IRLAS、LIFなどを用いた各種ラジカルの密度計測

下は本研究で用いているプラズマCVD装置図です。

プラズマCVD装置

図1 : プラズマCVD装置図


エネルギーデバイスプロセス計測制御システムの構築

背景

近年、化石燃料の枯渇といったエネルギー問題や二酸化炭素排出量の増加といった環境問題の解決が求められています。石油、ウランなどの化石燃料には限りがあるため、このまま使用し続ければ数十年で枯渇してしまうと予想されています。また、二酸化炭素の増加は地球温暖化の主要な原因であるといわれており、二酸化炭素排出量の内約8割は化石燃料の消費によるものです。
それらを解決するための新エネルギー発電として太陽光発電が、枯渇の心配がなくCO2の排出がないため注目されています。中でも、プラズマCVD法を用いて成膜される薄膜シリコン太陽電池は様々な応用が期待される太陽電池です。

特に、微結晶シリコン太陽電池はプラズマCVD法を用いて成膜することによって100~200度といった低温で大面積均一に成膜できるため、プラスチック基板を用いたフレキシブルデバイスを実現できると期待されています。

今後、さらに高品質な太陽電池を高速に作成するためには、結晶性に影響する水素ラジカル(粒子)の働きを従来よりも高める必要があります。そこで私たちの研究グループは、新たな手法での成膜、成膜機構の解明を行います。

アプローチ

我々の研究室では水素ラジカル注入型プラズマCVD法という新たな手法で成膜を行い、その膜特性を調べました。従来型のプラズマCVD法を用いた成膜ですと、高速成膜を行うために必要であるガス流量の増加やプラズマの高パワー化、高圧化などを行った際に結晶化度の低下や欠陥密度の増加による膜質の悪化という問題が生じてしまいます。

そこで、Hラジカル注入型を用いることで結晶化に十分なHラジカル密度を得て高速成膜時の膜質向上を試みると同時に、成膜時の成膜機構の解明を試みています。

成果

下図にHラジカル注入型プラズマCVD法により成膜した薄膜と従来型を用いて成膜した薄膜との比較を示します。

図1に成膜速度のSiH4流量依存のグラフを示します。

図2に結晶化度のSiH4流量依存のグラフを示します。

図1 成膜速度のSiH4流量依存

図2 結晶化度のSiH4流量依存

実験装置図


図3 プラズマCVD装置