大面積エッチング装置を用いたプラズマ診断

レーザートムソン散乱法を用いた電子の挙動に関する研究

目的

レーザートムソン散乱計測法を用いて、大規模エッチング装置の電子の振る舞いを解明する。

背景

現在、半導体集積回路の製造にはプラズマプロセスが多くの場面で使われています。 ガス構造や表面反応は数十年間研究されてきました。しかし、エッチングパフォーマンスと内部パラメータ(電子の性質やラジカル密度など)との関係は十分に解明されていません。 なぜならば、エッチング装置における電子の計測はラングミュアプローブ等の従来の方法を用いる方法では非常に難しいからです。

そこで、本研究では、電子の挙動を解明するため、トムソン散乱計測システムを構築し、電子温度・電子密度・電子エネルギー分布関数(EEDF: Electron Energy Distribution Function)を計測しました。 プラズマ気相の特性を解明し、プラズマを制御して、生産性の向上につながる研究を行っていきます。

アプローチ

下は本研究で用いているエッチング装置図です。

大規模エッチング装置

図1 : エッチング装置図

本装置は上部RF60MHz、下部RF13.56MHzの容量結合型プラズマ(CCP)を発生させるエッチング装置です。このエッチング装置は大面積のウ エハーに対応していることや、電極間のプラズマを観測する窓がついていることにより、プラズマの空間分布を計測することが可能です。空間分布を計測するこ とで、さらに大規模なプラズマ装置の製造の際の指針をたてることが可能になり、より生産性があがると考えています。

実験結果

図2にトムソン散乱スペクトルの模式図を示します。プラズマ中の自由電子によってドップラーシフトしたトムソン散乱スペクトルを観測することができます。 電子の速度は波長シフト幅に依存しており、電子エネルギーは電子の速度に依存しています。そこで、電子のエネルギーを横軸にプロットしなおすことにより、 電子エネルギー分布が求められます。(図3) 電子温度は図3のプロットのスロープの傾きから求められます。また、電子密度はトムソン散乱スペクトルの強度に比例して求めることができます。

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図2 :トムソン散乱スペクトル

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図3 :電子エネルギー分布

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